郊外への大型店や病院進出を規制 国交省方針

2005年11月02日20時33分

 国土交通省は2日、中心市街地の空洞化に歯止めをかけるため、大型商業施設や病院、福祉施設の郊外への立地を規制する方針を固めた。この日あった大臣諮問機関、社会資本整備審議会の小委員会に開発許可の規制を強化する方向性を示し、承諾を受けた。

 今月末の小委員会からの報告を踏まえ、経済産業省とともに「まちづくり三法」(大規模小売店舗立地法、中心市街地活性化法、都市計画法)の来年の通常国会での改正をめざす。

 郊外の市街化調整区域内での大規模開発が例外的に認められている現行法を見直し、市町村の判断だけでなく都道府県と住民の関与によって規制を強める。また、これまで開発許可の対象でなかった病院や老人ホームなど公共公益施設も新たに許可対象とし、都市機能を担う施設の郊外拡散を防ぐ。

 まちづくり三法をめぐっては、自民党も来年の通常国会での改正をめざしており、党内の中心市街地再活性化調査会が10月27日に改正案の概要をとりまとめた。


●地方都市の中心市街地・再生へ本部設置案・国の推進体制一元化

政府・与党内で、郊外への大型商業施設進出などで衰退する地方都市の中心市街地を再生するため、内閣に「中心市街地「活性化本部」(仮称)を設置する案が浮上している。国土交通、経済産業両省などこれまで縦割りで進めてきた取り組みを一元化し、国としての責任体制を明確にする狙いがある。今後、自民党と官邸、関係省庁を中心に調整が進む見通しだ。

地方都市の中心市街地は、郊外への大型商業施設や病院など公共公益施設の進出・移転と、それに伴う中心部の人口減少、空き地・空き店舗の増加などの影響で衰退が進んでいる。政府・与党は、無秩序な都市の拡散と中心部の空洞化を防ぐため、来年の通常国会提出に向け、都市計画法などまちづくり三法の見直しを進めている。

こうした中、自民党を中心に、まちづくり三法の所管が別々で、取り組みも縦割りになりがちな点を懸念。「各省庁がばらばらに対応するのではなく、国として責任を持った集中的な取り組みが必要」(同党中心市街地再活性化調査会)との声が高まり、政府内への本部設置案が浮上した。(静新1113日朝刊)




産業構造審議会流通部会・
中小企業政策審議会経営支援分科会商業部会
合同会議中間取りまとめ(案)

[ コンパクトでにぎわいあふれるまちづくりを目指して]
平成17年9月

【 目次 】
はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
T.中心市街地を取り巻く状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
1.まちの郊外化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
2.小売業の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
3.中心市街地・商業地区の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
U.現行施策の評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
1.中心市街地活性化法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
2.都市計画法等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
3.大店立地法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
V.今後の中心市街地活性化策の方向・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
1.人口減少社会におけるまちづくり・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
2.基本的な方向性 〜コンパクトでにぎわいあふれるまちづくり・・・ 16
おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24




はじめに
産業構造審議会流通部会及び中小企業政策審議会商業部会は、昨年9月に合同会議を設置し、大規模小売店舗法からいわゆる「まちづくり三法」(中心市街地活性化法(注)、大規模小売店舗立地法、都市計画法)への政策転換以降の中心市街地を巡る環境変化を踏まえた関連政策についてレビューを行った。本中間取りまとめは、これまでの合計12回の合同会議の議論の方向性を取りまとめたものである。
(注)中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律
大規模小売店舗の出店の在り方を律する法的枠組みは、「大型店VS中小店」という問題から、「中心市街地VS郊外」というまちづくり全体に関する立地場所の問題に変化してきたこと、規制緩和や地方分権といった国内における行政改革の進展や平成7年1月に世界貿易機関が設立され「サービスの貿易に関する一般協定」が発効するなどの国内外の環境が変化したことなどを受け、平成10年に大きく転換された。転換後の法律上の枠組み(まちづくり三法)は、「立地場所の問題への対応」と「中心市街地の活性化」を目的としており、都市計画法が大型店の立地が可能な地域と不可能な地域を決定し、立地場所が決定した後の大型店については、大規模小売店舗立地法(以下「大店立地法」という。)により、交通渋滞や騒音等の周辺の生活環境への影響について配慮することを求める一方、中心市街地活性化法及び各種の支援策により中心市街地の活性化を実現しようとするものであった。
しかしながら、その後の7年間の状況を見ると、中心市街地の状況は必ずしも改善しているとは言いがたい。中心市街地が衰退することに伴い、「コミュニティの危機」とも言える構造的な停滞感・閉塞感をもたらしている。このような中、まちづくり三法への政策転換以降の中心市街地を取り巻く環境変化を踏まえて、その間の関連政策についてレビューを行うことを通じ、状況を解明し今後の方向性を示すことが当合同会議の主要な目的の一つであった。
ヒアリング等を経て、当合同会議としては、中心市街地のおかれた状況は多様であり、中には顧客・住民ニーズを見事に実現したことによりにぎわいにあふれた中心市街地が存在する一方、多くの中心市街地においてはにぎわいを取り戻すどころか、むしろ衰退していることが確認された。
これから我が国は人口減少社会へと突入する。2007年、早ければ2006年にも人口が減少すると予測されているが、これは、明治以降の我が国が初めて経験する長期的な人口減少となる。高度経済成長期を中心に人口が増加し続け、国の制度も人口増加を前提に設計されていた我が国にとっては、長期の人口減少は未曾有の事態に他ならない。まさに制度面及び意識面でのパラダイムシフトが求められているのである。
人口減少に伴って自治体の税収の減少が予想される状況では、各自治体自身による歳出減等の懸命な努力が無い限り「持続的な自治体財政」は成り立たない。また、人口減少、高齢化によってまちの担い手が減少・高齢化し、更に車社会の進展等に伴って住民同士の顔なじみの関係が薄れる中では、当該地域固有の「社会・文化の継承」はもとより、顔なじみ同士の協力関係である「コミュニティの維持」すら困難となる。
「持続的な自治体財政」及び「コミュニティの維持」は、我々の生活の舞台である「まち」を確実に運営し、更に豊かなものとする上で極めて重要であり、我々は、これらの二要素をともに実現し得る「コンパクトでにぎわいあふれるまちづくり」に向けて、あらゆる努力を惜しむべきではない。
本中間取りまとめは、21世紀の我が国が人口減少社会という課題を克服し、コンパクトでにぎわいあふれるまちづくりを実現するための、第一歩である。
なお、まちづくりに関する法令や制度は密接かつ相互補完的な関係を有するものであるが、当合同会議以外でも例えば国土交通省の社会資本整備審議会をはじめとしてさまざまな場でまちづくりの在り方についての検討が進められているところである。本中間取りまとめ案は、これまでの当合同会議における議論の方向性を取りまとめたものであり、今後の関係方面での検討の進捗状況も踏まえた上で、合同会議としての報告書を取りまとめる予定である。

T.中心市街地を取り巻く状況
中心市街地は、城下町、宿場町、門前町といったその地域の歴史的経緯、また港湾・河川付近、駅周辺、幹線道路付近といったその地域の地理的状況を背景に、文化や伝統を育み、居住、公益(教育・医療・行政等)、産業等の各種機能を担ってきた市町村の中心であり、これまでの歴史、文化、伝統等を含めた広い意味での社会資本が蓄積された地域である。同時に、中心市街地は、人々が集い、語り、共に助け共に楽しむ、すなわち住民が人間らしい温かい生活を実現する「コミュニティ」として、極めて重要な存在であり、まちづくりにおいて中心市街地の活性化は、地域全体の消長や人々の生活を左右する極めて重要な課題である。
これまで当合同会議は12回の審議を重ね、25名の方々からのヒアリングを実施してきたが、その結果、我々は特に中心市街地の現状について以下のような理解に至った。
第一に、中心市街地の中には、景気の低迷、大型店の郊外立地にもかかわらず、関係者がまちづくりに積極的に取り組み、顧客・住民ニーズを見事に実現することにより、当該中心市街地のにぎわいが回復したものが存在する。そのいくつかは当合同会議において成功事例として紹介されたとおりであり、成功に至った要因としては、商業者・商店街等による顧客・消費者ニーズ実現に向けた努力、コミュニティとしての魅力向上に向けた関係者の取組、市町村による郊外開発抑制策と中心市街地活性化策の一体的推進等が指摘された。
第二に、多くの中心市街地は厳しい状況にある。その取組面での原因としては、顧客・消費者ニーズからの乖離、総花的で身の丈に合わない取組、郊外開発抑制なき商業活性化策、不十分なタウン・マネジメント活動等が指摘された。
全体を通じて中心市街地の活性化に大きな影響を与える要因として、以下の3点を挙げることができる。
1.まちの郊外化
我が国では、戦後一貫して人口が増加し、特に高度経済成長期においては毎年百万人を超える急速なスピードであった。このような中、国民のニーズを背景に道路整備が進められ自家用車も急速に普及したことにより、また中心市街地の地価の高さも後押しとなって、郊外居住や事業所の郊外立地が進み、それに併せて病院や役所といった公共施設の郊外移転等も進展した。この結果、多くのまちで郊外化が進展し、小売店・飲食店を始めとする多種多様な集客施設が、顧客を求めて郊外への立地を進めることとなった。
まちの郊外化は、日々の生活を営む舞台すなわち生活圏が中心市街地ではなく、むしろ郊外となっている人々が増加したことを意味している。近時、大都市圏や地方中核都市では居住の都心回帰が話題となることが多く、実際に都市中心部におけるマンション建設が進んでいる。しかしながら、平成16年11月に内閣府が実施した「住宅に関する世論調査」によれば国民の多くは未だに郊外居住を希望しており、また、自治体や土地所有者、集客施設経営者の状況(注)を踏まえると、特段の対策を講じない限り、今後もまちの郊外化が進展する可能性は高いものと予想される。
(注)各主体の状況
・自治体は、公的機関が所有する未利用地の有効活用や、大型店誘致により発生する雇用・税収についての関心が高い。
・工場所有者や農地所有者は、郊外に有している土地の有効活用を希望。
・小売店・飲食店を始めとする集客施設の経営者は、顧客・住民からのアクセスが良く、地価・賃料もできる限り低く抑えられる場所への立地を望む。
2.小売業の現状
我が国の小売業は、平成14年時点でGDP全体の5.2%(約26兆円)を占め、また産業就業者全体の12.2%の雇用の受け皿となっているなど日本経済において大きな位置を占めているが、販売額は近年減少し続けており、店舗規模の大小にかかわらず全体として厳しい状況にある。
また、大型店に対する見方も大きく変化した。すなわち、いかなる大型店も中小店と対立するということではなく、むしろ中心市街地に立地する大型店については中心市街地活性化につながるものとして評価される傾向となっている。
(1)小売業全体の状況
商業統計によれば、小売業の販売額は平成16年で128兆1000億円であるが、過去からの推移を見ると平成3年までは順調に増加を続けていたものの、その後の数年間はほぼ横ばいとなり、更に平成8年以降は8年連続で低下を続けている。また、小売業の就業者数は、平成11年まではほぼ一貫して伸びてきた。しかし、それ以降横ばい又は微減となっており、就業者の中でもパート・アルバイトといった雇用形態の割合も微増している。
この背景には、家計の所得額や可処分所得が近年減少していることや、その限られた家計消費が「モノ」(衣類・食品・家具等)よりも「サービス」(保健医療・交通・通信等)にシフトしていること等が挙げられる。
これは中小小売業に限った状況ではなく、大型店も極めて厳しい状況に置かれている。特に、平成12年頃から、売上の低迷・過剰債務等が原因で、そごう、長崎屋、マイカル、西武百貨店やダイエー等、経営不振や経営破綻に至る企業が相次いでいる。他方、小売業を業態別に分析した場合、百貨店が低迷し、総合スーパー(GMS)が概ね横ばいで推移している中で、コンビニエンスストアやドラッグストア、ホームセンターといった業態が売上高や店舗数を急速に伸ばしていることから、店舗規模が大きいか小さいかにかかわらず、多様かつ変化の激しい消費者ニーズにいち早く対応した事業者が急速に成長していると推察される。
他方、消費者サイドからみた場合には、平成17年5月に内閣府が実施した「小売店舗等に関する世論調査」によれば、4〜5年前と比較して買い物が便利になったと感じる者が全体の73%となっており、政策転換以降の買い物環境の充実に対しては好意的な評価を受けている。このような状況の下、同調査では、新たな大型店の出店を必要と感じる者より不要と感じる者の方が多くなっているとの結果となっている。
(2)大型店の出店状況
大店法(注)からまちづくり三法に政策転換したことにより、大型店の出店が加速したと指摘されることがあるが、これは正しくない。大規模小売店舗の新設届出数は、旧大店法施行時よりも大店立地法施行後の方が少ない。また、3万u超の超大型店に限って見ても、2000年に旧大店法に基づいて出店したものが最も多く、その前後の出店数に大きな変化はない。ただし、地方圏(三大都市圏以外)に限ると、ここ数年、超大型店の出店数が多くなっているため、郊外大型店増加という印象を強く与えている面はあろう。
他方で、立地場所については、駅周辺・市街地といった立地が減少する一方、郊外地域への立地割合が拡大しており、特に地方圏においては工業系用途地域・非線引き白地地域等への立地割合が拡大している。
なお、小売業の売場面積については、戦後ほぼ一貫して増加している一方、小売業の販売額は既述のとおり平成3年以降横ばいから低下傾向となっている。この結果、売場効率(1u当たりの販売額)は、店舗規模の大小を問わず平成3年をピークに低下してきている。また、店舗規模別に販売額に占める割合(シェア)を見ると、これも戦後ほぼ一貫して小型店舗の割合が減少する一方で大型店舗の割合が上昇している。
(注)大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律
(3)大型店に対する見方の変化(「大型店VS中小店」から「中心市街地VS郊外」へ)
旧大店法時代には、商業活動調整協議会等において大型店が中小店と対立する姿が見られたが、現在はむしろ大型店がどこに立地するかによって評価が分かれており、大型店が中心市街地に立地する場合は中心市街地の活性化につながるものとして高く評価される場合が多い一方、大型店の郊外立地は中心市街地に悪影響を与えるものとされることが多い。
他方、大型店が中心市街地から退店する場合、中心市街地の空洞化につながり、地域経済に悪影響がもたらされるとの指摘もある。
3.中心市街地・商業地区の状況
まちの郊外化、厳しい小売業の状況、大型店の郊外出店等は中心市街地・商業地区の衰退の大きな要因である。他方、商業地区の活性化を実現するためには、商業者・商店街といった商業地区の担い手は、もっぱらこれらの外部要因に責任転嫁するのではなく、むしろ自らの問題として顧客・住民ニーズを実現するべく努力することが大前提である。
消費者は、価格、品揃え、品質、近さ、一度の買い物で用が済むこと(ワンストップ)等を重視しており、これらの満足度が総合的に高い店舗で買い物をしているものと考えられる。逆に言えば、衰退・空洞化している中心市街地の商業地区は、これらの顧客・住民ニーズに十分対応ができていないものと考えられる。
また、中には顧客・住民ニーズを実現することにより成功に至る事業があるにもかかわらず、そのノウハウを活用する(水平展開する)仕組が民間ベースではないため、成功事業のノウハウは当該商業地区等の中に留まってしまい、他の商業地区等へと伝えていくことは困難である。
衰退・空洞化の原因は、概ね以下のように整理することができよう。
(1)競争条件の相違
地価・賃料、道路アクセス、敷地の広さ、権利関係等の面で、中心市街地は、廉価・大区画の用地供給が進む郊外部に比して条件が悪く、近年の消費形態に対応しにくい構図になっているといえる。
(2)商店街の特性
@独立する主体が細分化され多数存在
商業地区の中でも商店街は、多数の区画毎に、商業者、土地所有者、建物所有者、借地権者、借家権者等が存在している。これらの細分化された商店街は、閉店や賃貸化、相続等によって更に細分化される傾向となっている。
このため、特に現下のような厳しい経済状況のもとでは、個別の経営・財務状況、店主の年齢、後継者の有無等を反映し、それぞれの主体の意向が食い違うケースが多く、まちづくりに熱心なリーダーの不足も相俟って商業地区関係者が一丸となった取組が極めて困難で、商店街の魅力低下を生んでいる。
特に、土地所有者、建物所有者といった地権者は、テナント・ミックス事業、空き店舗対策等商業活性化への取組等で重要な役割を担うものの、まちづくりに協力的な地権者は少なく、景気回復や再開発事業等の対象化への期待等から、従前の賃借料に固執し、あるいは売却処分を意図して、借り手のいない空き店舗を放置する傾向にある。その結果、店舗・用地の未利用と賃料の高止まりが並存し、新規開業希望者の流入を阻んでしまうという問題がある。
A「個々の取組」及び「共同的な取組」の相互外部性
商店街は、個々の商店が全体として一つの集積を形成しているが、「個々の取組」と「共同的な取組」は相互に外部性を有し、影響を及ぼし合っている。即ち、個店の活力や集客力、営業状態等は全体の活力・魅力に影響を与え(One for All)、一方、商店街の特性や共同事業の成否は構成店舗の活力や後継者問題等にも深く関連する(All for One)。商学連携や住民との連携により、空き店舗を活用した活性化に成功している例もあるが、多くの商店街では空き店舗の増加や異質な業種の立地と、まちの魅力低下の悪循環に陥っている。
(3)中心市街地の「コミュニティ」としての魅力低下
中心市街地には、歴史、文化、伝統等を含めた広い意味での社会資本が蓄積されており、そこに住む人々の多くは、中心市街地において日々歩いて暮らす中で歴史・文化・伝統等に愛着心を持ち、日々地元の人々と触れ合う中で顔なじみとなり、ひいては共に助け共に楽しむという人間関係を築くこととなる。この人間関係を育み、楽しめることこそが、「コミュニティ」たる中心市街地固有の魅力であり、自らが住む中心市街地の人通りが少なくなり、更ににぎわいがなくなると寂しさを感じる由縁と考えられる。すなわち、中心市街地の衰退は、これまで中心市街地が培ってきた世代を越えた交流の機会や場の喪失につながっている。また、大型店やナショナルーチェーン店の中には、地域の歴史的・文化的なイベントやコミュニティ活動に積極的に参加・協力していない企業も存するとの指摘がある。それに伴い、地域の人間関係が希薄化し、これまでのコミュニティ機能が著しく低下したことで、住民のまちに対する安全・安心への危機感、まちの誇りの喪失などが生じている。
このコミュニティという魅力は、車での移動を前提とした、顔なじみの少ない郊外の大型店にはまねることのできない優位性であるが、近年、中心市街地において、このコミュニティとしての魅力が失われつつあることは否定できない。

U.現行施策の評価
大規模小売店舗の出店の在り方を律する法的枠組みは、「大型店VS中小店」という問題から、「中心市街地VS郊外」というまちづくり全体に関する立地場所の問題に変化してきたことを受け、「経済的規制から社会的規制へ」、「国から地方へ」といった理念の下、平成10年に大きく転換された。転換後の法律上の枠組み(まちづくり三法)は、「立地場所の問題への対応」と「中心市街地の活性化」を目的とし、都市計画法が大型店の立地が可能な地域と不可能な地域を決定し、立地場所が決まった後の大型店については、大店立地法により(立地の可否を判断するのではなく)交通渋滞や騒音といった周辺の生活環境への影響について生活者に配慮することを求める一方、中心市街地活性化法及び各種の支援策により中心市街地の活性化を実現しようとするものであった。
しかしながら、施行後7年を経たものの、中心市街地が総じて衰退する中、現行施策は都市機能の適正立地と中心市街地の活性化等に係る取組が一体的に行われていないことなどにより衰退の歯止めとして必ずしも機能しておらず、当初期待された効果は得られていない。その法的枠組が果たした意義と、過去7年間の反省から明らかになった問題点を整理することが必要である。
問題点は、
@中心市街地活性化法は、市街地の整備改善事業と商業等の活性化事業の一体的推進との趣旨の実現が不十分であり、また、商業以外の都市機能集約についての考え方が明確となっていない、
A都市計画法上のゾーニングは、原則として個々の市町村単位で実施するものであり周辺市町村や都道府県の意向など広域的な観点が反映されにくいこと等から必ずしも市町村にとって活用しやすい制度とはなっていない、と総括することができよう。
1.中心市街地活性化法
(1)意義
本法により、中心市街地活性化は市町村がイニシアティブを発揮する(基本計画の策定等)一方、具体的な中小商業集積の活性化事業の実施段階においては、民間(商工会、商工会議所や中小組合等)がこれに取り組むという枠組みが明確にされた。その結果、これまで678の基本計画が策定され、また、394の中小小売商業高度化事業構想が認定され、それに基づいた活動が行われている。(平成17年8月31日時点)
(2)問題点
@都市機能集約の視点の欠如
先にまち全体の郊外化進展の影響について触れたが、中心市街地活性化施策の必要性を提言した平成9年の本合同会議報告において、商業・サービス業の振興、街路や駐車場等インフラの整備に加えて、中心市街地における「公共施設の配置、公共交通機関の整備、住居の整備など広範な対策が必要」であることが指摘されている。しかしながら、現行中心市街地活性化法の目的は、「市街地の整備改善及び商業等の活性化を一体的に推進する」とされており、住宅、オフィス、学校、市役所・町村役場、高齢者福祉施設、保育施設、病院といった公共施設など様々な都市機能について市街地に集約し、まち全体の郊外化を防止する等、広範な対策の必要性を市町村等に十分認識させるものとはなっていない。
A基本計画等の問題
中心市街地活性化法では、市町村が市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する基本的な計画(以下「基本計画」という)を作成することができることとなっているが、実際に作成された計画を見ると、自治体によっては全市的な計画とはなっていない、地域住民や商業関係者のニーズを十分踏まえた計画とはなっていない、対象地域の選定に関しむやみに広い設定となっている、数値目標の設定が無い、作られた基本計画は国、都道府県に送付されるのみで、詳細な評価等はなされていない等の問題が見られる。
また、一旦策定した計画について、経済・社会情勢の変化に対応して適切な見直しを行うこともなされていない。
さらに、国や都道府県が中心市街地活性化のために市町村等への支援を行う際、送付を受けた基本計画の詳細な評価をすることなく、個別の事業毎に評価をすることとなり、これが結果として有効でない支援につながっている。
また、支援策の効果や実績を報告させる仕組みが存在しない、または機能していない等の問題もある。
Bタウン・マネジメント活動の問題
また、タウン・マネジメント活動(注1)の問題点として、TMOの活動が商業の活性化に偏っている点、実施責任や費用負担等が不明確である点、更には自治体や商業者の積極的な参加が得られず、責任が不明確となっている点が問題点として指摘されている。また、タウン・マネジメント実施主体が実効性のあるタウン・マネジメント活動を行うことができるよう検討する必要がある。
さらに、今後の課題として、調整力・指導力・PDCA(Plan-Do-Check-Action)のノウハウを兼ね備えたリーダーにふさわしい人材を充実すべき、財務基盤の脆弱性を克服すべき、商業者・地権者・商工会・商工会議所・行政など関係者間の連携を強化すべき等の点が指摘されている(注2)。
(注1)現行基本方針(主務大臣策定)にいうタウン・マネジメント活動とは、商店街地区全体を一つの商業集積と捉え、地域特性や消費者ニーズを踏まえながら、全体の魅力を高めるコンセプト形成、テナント構成・配置(テナント・ミックス)、商店街の各種情報(来街者数、空き店舗状況等)の把握、個店経営指導、共同イベント開催、清掃・警備、交通アクセス改善等を、専門的マネージャーのリーダーシップと地元行政機関等との連携の下に進めることにより、公共性の高い商業地区の生産性を高め、価値の向上に寄与する活動を指す。
(注2)総務省「中心市街地の活性化に関する行政評価・監視結果報告書」(平成16年)及び会計検査院平成15年度決算検査報告においても、同様の指摘がなされている。
2.都市計画法等
(1)意義
平成10年及び12年の都市計画法改正により、市町村がそれぞれの事情や特性に応じて独自のイニシアティブによって柔軟かつ機動的に土地用途規制を行い得る制度(特別用途地区制度及び特定用途制限地域制度)が整備された。
(2)問題点
しかしながら、制度導入後、実際にこれらの制度を活用している自治体数は限定されており、多くの自治体においては、まちの在り方に関する検討とその実現に向けた取組が不十分と考えられる。
また、現行の都市計画法等の土地利用規制の問題点として、以下の点が指摘されている。
@郊外開発が認められやすい
現行制度は、都市計画区域外の地域(特に転用後の元農地)、市街化調整区域、白地地域、市街化区域それぞれにおける規制が、必ずしも郊外に行けば行くほど厳しい体系にはなっていないため、郊外開発が認められやすく、コンパクトなまちづくりの考え方に沿った制度として十分ではない。
A広域的観点が反映されにくい
特別用途地区制度や特定用途制限地域制度を始め、都市計画手法は市町村に権限があるものが多く、当該市町村で用途制限を行っても他の市町村で立地が進むなど、広域的観点が反映されにくい制度となっている。
他方、本来用途制限は都市計画法等の土地利用規制に基づいて行うべきものの、上記のとおり都市計画法等の土地利用に関する制度が不十分であること等から、自治体が条例により立地制限を行おうとする動きがある。例えば、京都市や金沢市は、各エリアに建築できる施設の面積上限を定め、施設設置者に届け出義務を課す条例(ゾーニング型条例)を制定している。また、大型店等の商店会への加入を促す条例を始め、小売店舗に対し一定の配慮を求めている条例も存在する。
3.大店立地法
(1)意義
本法により、騒音・廃棄物・渋滞など旧大店法時代には手当されていなかった周辺生活環境問題について大型店設置者が適切な配慮を行うこととされた。本法5年の施行の結果、例えば経済産業省の調査では、大店立地法施行後に新設された大規模小売店舗と施行以前に設置されていた大規模小売店舗と比較すると、施行後に新設された大規模小売店舗の方が交通対策、防音対策、廃棄物対策、景観対策、歩行者の利便性確保等の面において、対策が進んでいるとの結果が示されている。
また、前述の世論調査においても、大型店に対しては、「何らかの規制を行うべき」との指摘(「必要だと思う」及び「どちらかと言えば必要だと思う」)が約60%となっており、大店立地法制定前に実施した平成9年調査とほぼ同レベルの高い水準となっているが、その内訳においては「必要だと思う」と考える者の割合が増加している。
(2)問題点
以上のような状況の下、大店立地法については、その適用対象について、小売業のみならずアミューズメント施設といった小売業以外の集客施設一般にも広げるべきではないか、事前手続のみで対応できない退店時の問題などについても大型店に一層の配慮を求めるべきではないかとの意見や、さらに、大型店の出店にともなう「周辺生活環境への影響」という範囲を超えて、地域経済や地球環境など広く社会的・経済的な影響が発生していることを踏まえて問題点を分析した上で必要な規制を検討すべきとの指摘もある。
また、中心市街地の活性化のためには、中心市街地に立地しようとする大型店については、大店立地法で要求している基準等を緩和できるようにすべきとの指摘もある。

V.今後の中心市街地活性化策の方向
T.においては、顧客・住民ニーズを実現して活性化に成功している中心市街地が存在する一方、現在中心市街地を取り巻く状況は厳しく、今後ますます深刻化する可能性があることを示した。また、U.においては、平成10年の政策転換がなされてから7年間の反省を踏まえ、政策転換後の法体系の問題点を明らかにした。
T.Uの検討を踏まえ、本章においては今後の中心市街地活性化策の基本的な方向性として、「コンパクトでにぎわいあふれるまちづくり」を提言したい。
1.人口減少社会におけるまちづくり
(1)人口減少社会の到来
我が国の人口は、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(平成14年)によれば、2007年から、早ければ2006年から人口減少が始まり、2050年には中位推計で2,700万人、低位推計では3,500万人以上も減少すると予測されている。また、世帯数については、若干のタイムラグがあるものの2015年をピークに減少する見通しとなっている。これほど長期かつ大規模の人口減少は、明治以降の我が国の歴史において未曾有の事態である。今後の中心市街地活性化策の基本的方向性の検討においては、人口増加を暗黙の前提とした従来型の制度設計ではなく、むしろ人口が急速に減少する時代、これに伴い人口の高齢化が加速化する時代に通用する持続可能なまちづくりを実現するための制度設計を目指すべきである。
(2)持続的な自治体財政
人口減少及び高齢化の進展に伴って自治体の税収の減少が予想される中、各自治体自身の歳出減や、いわゆる「平成の大合併」に見られる自治体同士の合併等の懸命な努力がなされない限り「持続的な自治体財政」は成り立たない。
さらに、市町村が将来的なインフラの維持コストを含めた中長期的な都市構造の全体像を明確にイメージした上で現段階から計画的な対応を進めない場合には、財政破綻を含め、取り返しのつかない事態を招く可能性すらある。
この「持続的な自治体財政」を実現するためには、今後は都市機能の集中を目指すことが望ましく、インフラの維持管理コストや行政サービスコスト(防災、防犯、福祉等)を抑えるよう各自治体に促すべきであろう。このような視点から、自治体においては、自治体内における大型の開発事業の是非を判断する際には、現在及び将来にわたっての公共投資の投資コストと税収や雇用などへの経済的・社会的な影響などを試算した上で判断することが必要となる。
(3)コミュニティの維持
人口減少と高齢化の進展によりまちの担い手が減少・高齢化し、更に車社会の進展等に伴って住民同士の顔なじみの関係が薄れる中では、当該地域固有の「社会・文化の継承」はもとより、顔なじみ同士の協力関係である「コミュニティの維持」すら困難となる。
コミュニティとは、人々が帰属意識を持つ集団・場と言い換えることができよう。コミュニティの中には、広範囲に点在する人々が集まる、様々な趣味や仕事を拠り所とするコミュニティもあるが、こうした特定の価値ではなく、地理的近接性を拠り所とする「地域コミュニティ」は、多様な価値(歴史・文化・防犯・防災・教育等)を総合的な観点から向上させることのできるコミュニティである。
その中でも、特に中心市街地におけるコミュニティは、付近住民とそれ以外の来街者とが互いに交差する中で成り立っていること、その中心市街地の多くの住民が何らかの形で関わることが期待されていること等から、そのコミュニティの生み出す「価値」は、まち全体の価値に大きく影響し、ひいては住民・来街者にとってのまちの価値を大きく左右する点で特徴を有する。たとえ郊外に居住する人であっても、かつては繁栄していた中心市街地がすっかり疲弊している姿を目にしたとき、何とかかつてのにぎわいを取り戻せないかと感じるのは、心の中に中心市街地に対する帰属意識があるからではないだろうか。
このように、住民・来街者にとって極めて重要な中心市街地のコミュニティの質を高める上で必要なことは、地域コミュニティの産み出す多様な価値の最大化であり、今後は、商業に限らず、歴史・文化・防犯・防災・介護・保育・教育・環境等の分野も含めた価値の創造を支援していくことが重要であり、関連する主体が一体となって取り組んでいくことが必要であろう。
2.基本的な方向性 〜 コンパクトでにぎわいあふれるまちづくり
既述のとおり、戦後の人口増加とこれに伴うモータリゼーションを背景に、まちは郊外化し、多くの住民にとって生活圏は郊外に移行しており、今後も郊外化が進展することが見込まれている。他方、人口減少社会において「持続的な自治体財政」及び「コミュニティの維持」を実現するための方向性としては、「コンパクトでにぎわいあふれるまちづくり」が望ましい。
そのためには、郊外ではなく中心市街地に様々な都市機能を集約させること((1)都市機能の市街地集約)と、来街者や住民のニーズを踏まえて、中心市街地における商業機能の強化や中心市街地のコミュニティとしての魅力向上に向けて取り組むこと((2)中心市街地のにぎわい回復)の双方を車の両輪として一体的に進めることが必要である。このようなまちは、高齢者でも歩いて暮らしていける点で高齢化社会において望ましいものであり、また車中心の社会の見直しにつながり得る点で地球温暖化対策としても望ましいものと考えられる。
他方、大都市圏のように市街地が連坦している地域においては、市街地の中で特定の区域に集約することは困難であるとの指摘もある。もとより、どのようなまちを目指すかについては、周辺地域を含めた広域的観点も踏まえつつ、住民の理解の下、最も身近な自治体である各市町村が選択した上で住民等の継続的な評価を受けて改善していくべきものであり、国がそれを強制すべきものではない。
(1)様々な都市機能の市街地集約
@中心市街地への様々な都市機能の集約化
中心市街地の居住者や事業所を増加させ、商業機能に限らず、高齢者福祉、医療、保育、教育等の都市機能を中心市街地に集約することは、まちの郊外化を食い止める有効な手法である。
特に、人口減少が進んでいく中、小売業販売額が今後も頭打ちであること、高齢化が進んでいくこと等を踏まえると、高齢者福祉施設、医療施設や保育施設等を郊外でなく中心市街地に立地することは重要であろう。
その際、市町村は、まちづくりにおけるイニシアティブを発揮する観点から、都市機能の市街地集約に関する総合的なコミットメントを明確にする必要がある。他方、国の役割は、都市機能の市街地集約に取り組んでいる市町村等に対して重点的に支援を行うこと、及び市町村による都市機能の市街地集約が円滑に実現されるよう制度的な問題を改善することとともに、その趣旨・目的を自治体を含む関係者に周知することであり、制度を整備するに当たっては以下の点に留意することが必要である。
A市街地集約を実現するための制度論
都市機能には、商業以外にも、住宅、オフィス、公共施設(市役所・町村役場、社会福祉施設、学校等)といった様々な機能が含まれるため、これらを包括したまちづくりを実現する法制度としては、従前より都市機能の整合的かつ計画的な配置の役割を担ってきた都市計画体系を前提とすることが適切である。この都市計画体系については、現行の都市計画法等の土地利用規制の問題点に包括的に対応し得るよう、以下の方向で制度が見直されることが期待される。
1) 郊外に行くほど規制が厳しくなる体系への移行
様々な都市機能を中心市街地に集約する観点からは、郊外地域に行くほど規制を厳しくし、郊外立地のハードルを高くする必要がある。このため、特に農地を含めた都市計画区域外の地域、市街化調整区域といった地域においては規制を強化する方向で見直し、地域全体における規制のバランスを調整する必要がある。
2) 大型店規制との関係
様々な都市機能の集約化を図るための制度設計に当たっては、大型店だけを対象とした規制強化では目的を達成できないことから、大型店に限定することなく都市機能全般を視野に入れた規制体系全体の見直しが期待される。
その際、例えば、大型店について見れば、大型店が立地できる地域においては、顧客・住民ニーズを実現するための営業面での競争は自由に行われるべきであり、個別の大型店の出店による既存商業者への影響によって出店の可否を判断することや、既存商業者の意見が出店の可否を判断するプロセスに過大な影響を与えることは、いずれも旧大店法時代の商業調整に陥り、ひいては制度の公平性・透明性と設置者の予見可能性を損なう可能性があるため不適切と考えられる。このため、大型店を含めた都市機能の集約化を図るための制度設計に当たっては、個別事業者に着目するのではなく、制度の公平性・透明性を確保する観点から、予め許容される用途を明らかにするゾーニング手法(用途制限)を基本とすることが期待される。
3) 広域調整の仕組の導入
都市機能の中にはその立地場所により周辺市町村に影響を与え得るものがあることから、個別市町村によるゾーニング規制を、例えば広域的観点から都道府県が調整する仕組みが必要である。その際、県を超えた影響が生じる場合への対応も念頭におくことが重要である。
B小売店に関する条例
まちづくりは、地域毎に個性的であるため、個々の市町村が主体的に取り組んでいくべき課題である。その際、地方公共団体は「法令に違反しない限りにおいて」という地方自治法(第14条)上の限定はあるものの、条例を活用してまちづくりを進めることも可能である。
現在も、前述(U.2.(2))のとおり条例という手法を活用して、大型小売店舗の立地を制限する動き(ゾーニング型条例)が見られるが、本来、土地の用途規制という財産権の制約を行うには、権利保護のための全国共通の枠組みである都市計画法に基づいて行われるべきものであり、今後、都市計画関連制度の一層の充実が図られる場合には、都市計画法体系を活用した取組が増えるものと期待される。
他方、ゾーニング型条例以外に、小売店に対し生活環境への配慮や地域への貢献を求める条例を、自治体が地域の特性を踏まえて定めている場合もある。
これら小売店に関する条例については、規制を受ける立場から過度の規制に対する懸念が強く示されている点にも留意した上で、条例の目的と関連深い法令との整合性を勘案しつつ、小売店舗のみを条例の対象にすることが妥当か否かについて十分に検討する必要があるとともに、大店立地法第13条の規定や国において経済的な規制から社会的な規制に政策転換したこと等も考慮し、地域的な需給状況を勘案して施策が講じられることのないよう留意すべきである。
いずれにせよ、地域の特性に応じたまちづくりを行う上で、国の法律や制度を補完する必要がある場合には、自治体は、以上の諸点に留意しつつ、条例の活用を含め主体的な取組を検討すべきである。
C大店立地法の在り方
大型店が個別の出店を行うに際し、前述のゾーニング規制に加えた追加的な規制を行うべきか否かという問題については、一層規制を強化すべきとする意見、1,000u超の大型店と数万uの大型店を同一に論じるべきでないという意見、小売業の発展や消費者の利便性の視点から競争制限の是非を判断すべきという意見、ゾーニング規制で対応すべきであり大型店に特化した個別規制を強化すべきでないとする意見、地方条例の活用が可能であるとする意見など大店立地法の範疇であるか否かを別として多様な指摘がなされた。
現行の大店立地法は、大型店の立地場所が決定した後、周辺生活環境を保持する観点から、交通対策、防音対策、廃棄物対策、景観対策等を促す役割を担っている。前述の「小売店舗等に関する世論調査」においても、大型店の出店にあたって規制が必要と考える事項としては、交通問題や騒音問題をあげる国民が多く、旧大店法では対応できなかった地域住民の関心の高い問題に対し、適切な対応を可能としていることにかんがみれば、現在その役割は果たされていると評価できる。
他方、大店立地法の適用対象を小売業以外にも広げるべきとの指摘がある。しかしながら、大店立地法は、不特定多数の来客や大規模な物流があり、また、生活利便施設として生活空間から一定の範囲内に立地するという大型店の小売業としての特性に着目した法律である。一方、例えばサービス業は、ホテル、アミューズメント施設、映画館、遊園地、球場など極めて多種多様であり、適用対象を拡大する規制強化を行う場合には、それぞれの施設がもたらしている生活環境への悪影響の実態や内容を具体的に分析する必要があるが、少なくとも現時点では大型の施設であるがゆえに悪影響が生じているとの状況にはない。また、サービス施設を含む大規模集客施設全般を対象とする場合には、関係法令(環境影響評価法、都市計画体系等)との再整理や役割分担を行うことが必要である。このような点を踏まえれば、大店立地法の適用対象の拡大には、現段階においては慎重であるべきと考えられる。大型店の社会的責任の一環として、退店時の適切な対応を含む地域貢献を求めるべきではないかとの指摘もある。また、前述の「小売店舗等に関する世論調査」においては、新たに開店する大型店に対して、周辺の中小小売店がさびれ買い物が不便になることや、子供の教育等青少年への悪影響などの懸念を有する者も2割前後存在するなど地域住民の関心の多様化もみられる。当合同会議が本年2月に報告したとおり(注)、小売業の地域密着産業としての特性やその規模の故に、大型店に対しては地域貢献についての期待が高いことに留意すべきである。
具体的には、立地場所の選定に際して各種公的計画等を十分検討した上で行うこと、出店時において地域貢献など今後の運営方針について広く情報提供するよう努めること、出店後においても周辺生活環境に配慮して必要な対応策を講じること、地域の核としてまちのにぎわいや交流の場を構築するための地域活動について協力すること、仮に退店する事態に至った場合には、パート社員等への再就職の斡旋や後継テナント探しの他、退店後の検討のための時間的な余裕が生まれるようできるだけ早期に地域社会に情報提供することなどが期待されるところである。これを実現するため、何らかの規制が必要か、規制ではなくむしろ大型店が自主的に対応すべき事項かについては、さまざまな見解もあるため、大型店の対応状況なども注視しながら引き続き検討すべきである。
なお、退店時の対応として、建物の取り壊し費用など金銭的な出捐を求めるべきとの意見もあるが、小売業全体の経営状況が厳しい中、経営上撤退せざるを得ない場合があることも否定できないこと、また、大型店以外にもその閉鎖・移転によってまちのにぎわいに負の影響を与える施設があることから考えれば、これは中期的な課題として検討していくべき事項であろう。
(注)大規模小売店舗立地法第4条の指針改定案の策定に当たって(平成17年2月23日)
(2)中心市街地におけるにぎわい回復
中心市街地における商業を活性化し、更に商業以外のタウン・マネジメント活動を強化することは、人通りや人と人とのコミュニケーションの機会を増やして「にぎわい」を回復させ、ひいてはまちに「コミュニティ」という彩りを加えるものと考えられる。
その際、各市町村は都市圏の中での自らの役割・位置付けを踏まえた上で、中心市街地の将来目指すべき方向を見定め、にぎわい回復に向けた明確な目標を持ち身の丈に応じた適切な事業を選択した計画を立てて、まちづくりに取り組むべきである。また、国は「選択と集中」による重点的な支援を行うべきである。
加えて、中心市街地におけるにぎわい回復に向けた事業は、仮に当該事業が成功してもそのノウハウをマニュアル化することは大変困難であり、同様の事業を試みる人々に伝わることはほとんどなかった。成功事例を全国に拡大するため、成功事業のノウハウを水平展開するための支援を行うべきである。
@「都市機能の市街地集約とにぎわい回復の一体的取組」への「選択と集中」
これまでの中心市街地に対する支援は、都市機能の中でも商店機能の強化に対する支援が中心であり、また、必ずしも中心市街地の整備改善との一体的推進が十分ではなかった。
今後は、様々な都市機能の市街地への集約と中心市街地のにぎわい回復を一体的に取り組む中心市街地への「選択と集中」を図り、重点的に支援策を投入して行くべきである。
A総合的なタウン・マネジメント体制の構築
タウン・マネジメント活動は、地元自治体がその地域特性を生かしつつ、まちづくり全体の設計を行い、その中で商工会議所などの関連する多様な民間組織が主体となって、都道府県・市町村の都市計画の考え方を踏まえ、まちのにぎわい回復に寄与する実効性のある活動を責任を持って行うことが必要である。具体的には、商業機能の強化に係る取組に加えて、中心市街地の整備改善に関する事業、子育て支援施設・高齢者福祉施設などのコミュニティ活動施設設置事業、中心市街地における都市型新事業の推進業務や中心市街地の清掃、防犯、情報提供活動等まちのあらゆる構成要素を集約し、活性化させるための広範な活動を行うべきである。
また、こうしたまちづくり全体に関わる活動を官民が協力して実施することを可能とするタウン・マネジメント体制を構築すべきである。
B商業活性化のための取組の推進
中小商業が集積した商店街などにおいては、前述のように空き店舗拡大と商店街全体の魅力低下の悪循環に陥っている場合が多く、共同的取組と個々の構成店舗の取組とを、相乗的好循環へ転換させることが課題である。
具体的には、商業の機能強化にあたっては、前述した総合的なタウン・マネジメントの一環として、次に掲げるような取組の推進が必要である。
1) 商業者・地権者等が自らの問題として主体的に取り組む仕組みの構築
2) 専任マネージャーのもと、活性化コンセプト形成、テナント・ミックス、空き店舗解消策、防犯・清掃活動、イベント実施、景観統一、ハード基盤整備などを盛り込んだ中期的なプランの策定(Plan)・実施(Do)・検証(Check)・改善(Action)への取組み
3) 関係行政機関、TMO、各種事業実施主体、市民等との連携・協議体制の構築
C商業活性化等の取組に対する公的支援
上述のとおり、商業機能はまちのにぎわい回復に寄与し、中心市街地の活性化を図る上で重要な位置づけを有している。国は商業者の商業活性化及びまちのにぎわい回復に資する様々な取組に関するインセンティブ付与などのため、補助制度、税制措置等の支援を講じていく必要がある。
D自治体の役割
地域住民の豊かな暮らしを支え、持続させていくためには、これらの「まちの価値」をいかに高めていくか、という視点が重要であり、自治体においては、商店街等の活性化にあたって、自ら主体的、積極的に関与することが求められている。
(3)様々な都市機能の市街地集約と中心市街地におけるにぎわい回復の一体的推

現行の中心市街地活性化法は、「市街地の整備改善及び商業等の活性化を一体的に推進する」ことが規定されているものの、様々な都市機能を市街地に集約化する観点や、にぎわい回復に向けた商業分野以外の幅広い対策の観点が不足していた。しかしながらこれまで述べてきたように、都市機能を市街地に集約化する観点や、にぎわい回復に向けた商業分野以外の幅広い対策の観点を明確にする必要があり、これを改正し、地域コミュニティの構造的な停滞感・閉塞感や長期の人口減少社会といったまちづくりを取り巻く環境の変化に対応した新たな制度設計を行うべきであろう。
また、その際、自治体が都市計画法、大店立地法、農地法、景観法等の様々な法制度を一体的・整合的に運用することを確保する観点や、地域住民・地権者などを含む関係者が今後のまちづくりについての一層の関心を高め、その意識を昂揚するという観点から、中心市街地活性化法を抜本的に改正し、中心市街地活性化の理念や政策支援手法等を定める基本的な法律とすることも一案である。

おわりに
我が国は、明治以来、初めて経験する長期的な人口減少を迎える。
本中間取りまとめの冒頭にも明記したとおり、人口減少や高齢化、車社会の進展等に伴って「持続的な自治体財政」及び「コミュニティの維持」がより一層困難となる中、我々の生活の舞台である「まち」を確実に運営し、更に豊かなものとするために我々はあらゆる努力を惜しむべきではない。
この「持続的な自治体財政」及び「コミュニティの維持」をともに実現するための方向性として「コンパクトでにぎわいあふれるまちづくり」を提示したが、これはあくまで方向性に過ぎず、実現に向けた契機に過ぎない。
我が国においてどれ一つとして同じまちは存在しておらず、更にそこで生活する住民のニーズ及びそこを訪れる来街者のニーズも多様である以上、望ましい「まちの在り方」も各まちによって異なって当然である。しかし、いずれのまちについても共通して言えるのは、「まちの在り方」を最終的に決めるのは、そこで生活を営み、あるいは訪れる「住民・顧客のニーズ」であるべきという点である。
このため、まちづくりに当たっては、まちづくりの主役である住民と頻繁に接し、直接サービスを提供している商店、商店街、その他民間事業者も、NPO、市町村とともに主体的担い手となり、住民との不断の対話を通じて、住民ニーズの実現に向けた取組を積極的に行うことが強く期待されている。
また、「まちづくり」を取り巻く状況は日々変化している。まちづくり三法のほか、景観法を始めとする各種ルールが生み出される一方、支援策の在り方を大きく左右する、国と地方の在り方に関する三位一体改革が進められている。加えて、地球温暖化や高齢化に対応する観点も踏まえてまちづくりを進めるべきとの指摘もある。したがって、まちづくりを検討する際は、こういった多様かつ複雑な問題を総合的に考える「場」として、中心市街地を位置づけるべきである。
本中間取りまとめが、「コンパクトでにぎわいあふれるまちづくり」に向けた出発点となることを期待し、本中間取りまとめの結びとしたい。
以上

【別紙1】審議経過
第1回 平成16年9月6日(火)10:00〜12:00
○小売業の現状について
○まちづくり3法の運用状況について
第2回 10月5日(火)15:00〜17:00
○大規模小売店舗立地法の指針の見直しについて
○全国の中心市街地の状況について(藻谷委員)
第3回 10月21日(木)10:00〜12:00
○ヒアリング:日本及び諸外国の関連制度等について(浅見委員、中井委員、原田委員)
第4回 11月1日(月)10:00〜12:00
○ヒアリング:地方自治体の取組について(寺田(典)委員代理、谷本委 員、福島県、金沢市)
第5回 11月4日(木)9:30〜12:00
○ヒアリング:商業関係者の現状と要望について(岩井委員、篠原委員、坪井委員、寺田範男委員、成宮委員、岩ア委員、遠藤委員、川島委員、中村委員、松岡委員)
第6回 12月22日(水)10:00〜12:00
○大規模小売店舗立地法の指針の見直しについて
○ヒアリング:北山孝雄代表(まちづくりの現場から)、秋元委員(生活者の視点から)
第7回 平成17年2月23日(水)10:00〜12:00
○大規模小売店舗立地法の指針の見直しについて(パブリックコメント結果等)
○まちづくり三法をとりまく状況などについて
第8回 4月11日(月)10:00〜12:00
○中心商業地区のまちづくり活動及び活性化に向けた方策(ヒアリング)
:竹本慶三理事長(佐世保市の取り組み)、中小企業基盤整備機構河上高廣課長(我が国におけるまちづくり活動)、法政大学保井美樹氏(米国のまちづくり制度)」
第9回 4月27日(水)10:00〜12:00
○小売店舗に関連する「まちづくり条例」について
○中心市街地活性化支援策の現状と課題等について(ヒアリングなど)
ヒアリング:安井潤一郎氏(早稲田商店会の事業)、木下斉氏(他地域への展開のあり方への提案)
第10回 6月3日(金) 14:00〜16:00
○まちづくり三法の評価及び今後の方向性に関する論点整理について
第11回 7月 8日(金)10:00〜12:00
○中間取りまとめ(案)について
第12回 9月 8日(木)10:00〜12:00
○中間取りまとめ(案)について

【別紙2】
産業構造審議会流通部会・中小企業政策審議会商業部会合同会議委員名簿
秋元 真理子 株式会社旭リサーチセンター主幹研究員
浅野 光行 早稲田大学教授
浅見 泰司 東京大学大学院教授
石原 武政 大阪市立大学大学院経営学研究科教授
岩井 滉 協同組合連合会日本専門店会連盟理事長
岩ア 雄一 (社)日本ショッピングセンター協会会長
上原 征彦 明治大学大学院教授
遠藤 敏東 (社)日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会顧問
尾池 良行 全国卸商業団地協同組合連合会会長
片岡 由美 中小企業診断士
川島 宏 日本チェーンストア協会副会長
篠原 徹 日本商工会議所常務理事
鈴木 孝男 独立行政法人中小企業基盤整備機構理事長
谷本 巖 全国市長会相談役(経済委員会担当)[岡山県井原市長]
坪井 明治 全国商店街振興組合連合会副理事長
寺田 範雄 全国商工会連合会専務理事
寺田 典城 全国知事会農林商工調査会委員長[秋田県知事]
中井 検裕 東京工業大学大学院教授
中村 胤夫 日本百貨店協会会長
成宮 治 全国中小企業団体中央会専務理事
永井 多惠子 日本放送協会副会長(前世田谷文化生活情報センター館長)
原田 英生 流通経済大学経済学部教授
松岡 康雄 (社)日本フランチャイズチェーン協会理事
三村 優美子 青山学院大学経営学部教授
宮下 正房 東京経済大学経営学部教授
藻谷 浩介 日本政策投資銀行地域企画部参事役
矢作 弘 大阪市立大学大学院創造都市研究科教授
(50音順、敬称略)