まちづくり

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平成16年5月31日、上本南部街区、アーケード西街区、速水史朗氏制作野外彫刻完成

人と芸術融合した通りに・触れて、座れ、横になることも

彫刻家速水史朗氏の作品を設置

アーケード名店街と南部上本通り歩道の改修工事が、来年三月の完成予定で進められている。通りを飾るモニュメントと、街路に置かれるベンチのストリートファニチャーは黒の花崗岩製の彫刻で、人と芸術が融合した通りになる。モニュメントは四基、ベンチは全部で十三基が設置されるが、いずれも通りを行く人が気軽に触れることのできる作品を目指す速水史朗氏の手によるもの。全国の公共施設などの彫刻を手掛ける速水氏は今回の作品について、「人と芸術の接点を模索した」と話している。市内では、ストリートファニチャーが設置された通りとして、あげつち通りがある。

モニュメントは、丸みを帯びたシンプルなデザインで、中央に開いた四角形の穴から向こう側を見ることができるようにした。一方のベンチは沼津セントラルパーク構想の「水辺の風を感じるまちづくり」のテーマから狩野川の流れをイメージしたという。

最初に設置されたのは、幅二三〇aと一三〇aの大小一セット。二つの山がなだらかな曲線でつながったものと、丸く盛り上がった形のものとがある。座るだけでなく、横になることも想定したデザインで、体の疲れを癒すのに調度良いのではないかという。花崗岩だけのもの、花崗岩と木の組合せ、セットでなく単体のものなどさまざま。ベンチを置く場所は、通りの両側に四十カ所あったパーキングチケットエリアを三十カ所に減らし、減らした個所を歩道からの突き出し部分とした。

今回の整備はセントラルパーク構想の一環で、国のまちづくか総合支援を受け、街の活性化と歩行者を優先させた通り作りを目的としている。通りは総延長三百十六b。交差点の車道部分を除き片側二百七十材ある歩道には両側とも透水性のインターロッキングブロック工法を採用。細い路地との交差部分では歩道と車道の段差をゼロにする。通常の通行用道路ということではなく、人が集まり、イベントが行え、実質的に広場としても使用できるようにする、ことが狙いだという。

当初計画では彫刻の設置はなく、彫刻は工事が行われる直前に地元から提案したもの。ぬましんストリートギャラリーでの展示で速水氏を知った上本通り商店主らが、自分達の通りに設置しようと速水氏と話し合いを重ねる中で、設置に関する具体的な内容となっていったが、南部上本通りとアーケード名店街の改修工事と時期が重なったことで具体化の運びとなった。

市では、予定していた金属製のベンチ購入の費用を彫刻に振り向け、予算を変えずに計画の中身変更に対応した。複雑なデザインだった照明灯も、通りが沼津城の外堀と重なる場所に位置するなど、沼津の歴史を勉強した速水氏のデザインによるものに替えている。

速水氏は、「彫刻は市民の語らいや触れ合いで賑わいを創出しようとするもの。往来する人の憩いの場にすれば、商店街がにぎわう結果になるのではないか」とし、「美術品は、『腰掛けてはいけない』『乗ってはいけない』というのではなく、人とアートの接点を作ることが重要」だと持論を強調。自宅がある香川県から二十回以上、沼津に足を運び、その都度、商店主らと語り合い、「町の様子を知った彫刻家が通りの建設に携わった方が良い」とし工事の総合的なデザインも担当している。(沼朝6月1日号より)

速水史朗(はやみ・しろう)略歴

1927年香川県生まれ。49年徳島工業専門学校機械科(現徳島大学工学部)卒。64年から高松で個展をはじめ、68年から東京を中心に個展を続ける(村松画廊、ギャラリーせいぼう、ギャラリー上田、ギャラリーマロニエ他)

69年から現代国際彫刻展、現代日本彫刻展、神戸須磨離宮公園現代彫刻展等、野外彫刻展に精力的に出品、数々の賞を受ける。91年香川県文化功労者表彰。96年紫綬褒章受章。00年国際芸術文化賞受賞。

パブリックコレクション

風刺とユーモア館(ブルガリア)ハーシュホーン美術館(ワシントン)エヴァーソン美術館(ニューヨーク)

愛知芸術文化センター・大原美術館・京都国立近代美術館・国立科学博物館・国立国際美術館・高松市美術館・東京国立近代美術館・東京都美術館・東京都庁・箱根彫刻の森美術館・他


アーケード名店街等整備終了へ

歩道を拡幅し彫刻や植栽・セントラル構想水辺の商店街ゾーンに

アーケード名店街と、上本通り商店街一部で行われていた街路整備が二十八日に終了する。

この整備では、アーケード名店街と、旧国道一号南側の上本通り商店街一部の歩道部分が拡幅され、ストリートファニチャー十三基とモニュメント四基を設置したのが特徴的。

広がった歩道は、歩行者や自転車の往来のためのスムース歩道として整備されており、市によれば、狩野川をメーンとした沼津セントラルパーク構想の中で歩行者や自転車に配慮したものだという。街路整備は十五、十六年度の二年間をかけて行われ、今年三月には全体の形がほぼ整ったが、現在、点検後の調整作業が行われている。

セントラルパーク構想では、「街の中心を悠然と流れる狩野川は沼津の街の個性を表現し、人々に潤いを与えてくれる。この沼津ならではの貴重な空間の価値をさらに引き出していくことにより、市の中心市街地が、県東部の中心的な役割を担っていく上で、将来に向かい、さらに人々の交流の場として魅力を高めていくことが重要だ」としており、今回の整備も同構想に基づいている。

狩野川が、かつて魚河岸として市街地のにぎわいの中心だったことなど活用の仕方によって観光資源にも位置付けられるという認識から、これをまちの活性化に結び付けようというもの。同構想では、永代橋東西の通りから北側、旧国道一号から南側、三園橋南北の通り(国道四一四号)から西側、アーケード名店街から東側と、各通りで囲まれた市街地を対象エリアとしている。

構想の理念から、アーケード名店街のように直接、狩野川に面していない地域でも、訪れた人が、背景に狩野川があることをイメージできるようなまちづくりを進めている。

構想では、アーケード名店街などを「水辺の商店街ゾーン」と位置付廿ており、既に工事が終わったエリアでは、あゆみ橋が「水辺のかけ橋ゾーン」、川廓通りが「水辺の交流ゾーン」、銀座通りが「水辺の商店街ゾーン」とされている。

アーケード名店街などに設置されたストリートファニチャー、モニュメントなどは、狩野川の流れをイメージして作られた。そのため、流線形をしたものが多く、作者である彫刻家の速水史朗氏(香川県)は、子どもが寝転がったり、大人が座ったりと、市民が気軽に触れてくれることに期待しているという。

同街路ではこのほか、旧国道一号と接続する通りの北端と、御成橋通りと接する南端交差点付近の歩道部分を、車道を狭める形で拡幅。これによって生じたスペースは、一部を芝で覆ってヤマモモを植え、モニュメントを設置している。また、四十台分あったパーキングチケットエリアも十四台分を減らし、空いたスペースは車道に出っ張る形の張り出し歩道にしている。交差点付近の歩道部を歩道の拡幅したりパーキングチケットエリアを撤去したりしたのは、歩行者や自転車の通行を重視した考えに基づくもの。

一方で、この整備と並行して行われた中央ガードの改修に伴い、車の流れが変わり上本通り商店街、アーケード名店街を通行する車両が増えることが予想されたため、当初の計画にあったものの歩道の拡幅を取り止めた部分もある。街路南端交差点付近、東側歩道部分では、中央ガード方面から南下し同名店街から左折、御成橋方面に向かう車両が増えるのではないかと見て馬車両の流れを確保するため、拡幅計画を変更して従来の形を維持した。(沼朝4月20日号)


「商店街で芸術に触れて」

沼津中心部、速水さんの彫刻設置・「生活に潤い」評判上々

「芸術に触れながら、商店街を歩く楽しみを再発見してほしい」ー。古くからの商店が軒を連ねる沼津市中心部の上本通り商店街とアーケード名店街が、一人の彫刻家との出合いにより、屋外彫刻に親しめる空間へと生まれ変わった。中心部の空洞化が叫ばれて久しい中、関係者は「商店街を買い物だけの場所から、市民の生活に潤いを与える場所にしていきたい」と力を込める。

上本通り商店街の南側七十bと、そこからさらに二百b続くアーケード名店街を対象に、同市が平成十五年から今年四月末まで修景工事を実施。商店街の声を取り入れ、黒御影石を使った十七点の彫刻を設置した。

製作者は、国立国際美術館や箱根彫刻の森美術館など全国に屋外彫刻を手掛ける香川県の速水史朗さん(七七)。地元と速水さんの出合いは平成十四年、速水さんが沼津信用金庫の招きで行った「まちづくりと彫刻」の講演を、上本通り商店街振興組合の関係者が聞いたのがきっかけ。長谷川徹理事長(五九)は「彫刻を街の一部にさせるという速水さんの発想が興味深かった。沼津に取り入れたいと考えた」と振り返る。

当時、修景工事は大枠の計画が決まっていたが、長谷川理事長らは市やアーケード名店街関係者に変更を相談。市も前向きにとらえ、同年六月から一年かけ、三者で新たな計画を作り直した。月一回の策定作業には、速水さんも駆け付けた。

彫刻は狩野川の流れをイメージした柔らかな曲線が特徴。早くも評判は上々で、アーケード名店街の大野隆久副理事長(四九)は「面白いと声を掛けてくれるお客さんや、信号待ちで腰を下ろす歩行者、子供たちが目に付くようになった」と話す。将来的には、今回の工事対象外だった上本通りの北側二百三十bにも、同じコンセプトの彫刻設置を目指すとともに、「芸術や文化をキーワードにしたソフト面の事業を積極的に行いたい」(長谷川理事長)という。

速水さんは「地元の皆さんが熱心で、思い出に残る取り組みだった。彫刻は人が触れることで輝きを増すというのが自分の考え。気軽に座ったり乗ったりしてほしい」と呼び掛けている。(静新平成17年5月13日夕刊)